うめ先生のブログ

「子どもを集める」のではなく「子どもが集まる」保育をしよう!

それ保育観の違い?間違った保育ではない?

ななちゃん(仮名)は4歳児。

とても真面目な性格で頑張り屋さんの女の子でした。 

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まるで誰かと競争しているかのように、給食は早くに食べ終え、片付けや午睡の準備も速やかに終わらせていくななちゃん。 

 

だけどそんなななちゃんの様子が気になりました。 

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特に気にするようになったのは、この出来事。

給食のカレーライス、ヨーグルトサラダと言えば、昔も今も子どもたちの大好きなメニューの代表格だと思うのですが・・・ 

 

ななちゃんはいつもの通りおかわりは拒否。

でも、着替え終わったななちゃんはおかわりをして食事を楽しむお友達をとてもうらやましそうにみていました。

  

「ななちゃん、本当はおかわりしたかったんじゃない?」

「もう着替えちゃったけど、まだあるよ?食べる?」

聞いてみたけど、ためらいながらもななちゃんはやっぱりおかわりはしませんでした。

 

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好き嫌いはなく、おかわりこそしないけど何でも旺盛に食べるななちゃん。

本当におかわりが不要ならばそれでいいのだけど、明らかにお友達のことがうらやましそう。

「いちばんになった!」と行動を終えるたびに発する言葉も気になりました。 

 

ななちゃんの背景にあるものは何だろう?

  

ななちゃんのお母さんによると、家ではよくおかわりをし、園での何でもてきぱきとこなす姿とは違い、のんびりゆっくりしていることがわかりました。

  

この園に赴任してすぐの出来事だったので、他の先生方にも尋ねてみました。

(前担任は退職されてもう園にはいませんでした。)

そして浮かび上がったことは、  

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前担任のこんな口癖でした。

  

「はやく」「いちばん」をあおる言葉の数々。

これは他の先生方も本当は気になっていたそうです。

ですが、当時この先生は退職目前のベテラン保育士。

何も言えなかった、とのことでした。 

 

家ではのんびりリラックスするななちゃん。

でも保育園では、先生の言うとおり何でもはやくに終わらせて、

「はやくてえらいね」

「いちばんでえらいね」

褒められたくて頑張ってたんですね。

好きな給食のおかわりも我慢して、頑張ってたんです。

  

この時のななちゃんを思い出すと今でも胸が痛み、泣きそうになります。

  

「先生に褒められたい」

「先生に好かれたい」

  

そんなななちゃんの気持ちを受け止めつつ、何でもはやくていちばんがえらいわけではないこと。

おかわりして食べたい気持ちを我慢する必要はないこと。

おかわりしたいという自分の気持ちを言う大切さを伝えていきました。 

 

ななちゃんにとっては、前担任も大好きな先生。

その先生の言葉を否定することは、ななちゃんにはショックなはず。

そうならないように、

「うめ先生は、こう思ってるよ」

「うめ先生は、いちばんでなくても、食べたいものを食べるななちゃんが好きだな」

と時間をかけて伝えていきました。 

 

そしてこのことは、職員会議でもクラスの連絡事項として報告し、私が休みや研修で不在のときに、どの先生がカバーに入ってくれても、同じ関わりが出来るよう連携してもらいました。

  

もちろんななちゃんだけでなく、クラスの子どもたちは、

「はやくすることがえらい」

「いちばんがえらい」

と一年間言われ続けていたわけです。 

 

そうではないことをクラスの子どもたちに少しずつ、でもしっかり伝えていきました。

  

ななちゃんはこの後、食べたいものはしっかりおかわりするようになりました。

いちばんに着替え終わらないことがあっても平気です。

  

カレーの入った大鍋の前に並ぶようになったななちゃんの姿には、本当にホッとしました。

  

だけど、この園の保育を振り返ったら、まだまだ安心は出来ませんでした。

  

前担任は一人でこのクラスを持っていたのですが、カバーに入る先生方は「はやく」「いちばん」をあおる保育に疑問を持ち、ななちゃんを気に掛けながらも、何も出来ずにいました。

  

私もこのクラスを一人担任として引継ぎましたが、もしこの前担任と二人でこのクラスを持つことになっていたらどうでしょうか?

  

自分より経験年数がはるかに上の先生が間違った保育をしていたら、どうしたでしょうか?

  

保育現場にはまだまだこんなことがたくさん起こっていると正直思います。

一緒に組む先生と「保育観が違う」ときはいいんです。

話し合って、一緒に試行錯誤して、意見をすりよせていくんです。

  

ですがこのようなケースを「保育観の違い」で片付けて欲しくありません。

明らかに間違った保育をしている保育士を前に、その言葉で逃げるべきではありません。

  

私にはこの前担任が保育所保育指針をしっかり熟知し、園の保育方針を踏まえ、保育をしていたとは到底思えません。 

 

そして経験の多い保育士に意見出来ない、また、正規職員に臨時職員やパート保育士が意見出来ない、そんな職場環境のこわさも感じました。

  

その先生が正しいとは限らないのです。

  

でも子どもは一心に信じ、ついていくし、従わざるを得ない保育士もいる・・・。

  

こわくないですか?

  

子どもの前に立つ以上、自分の下に後輩が出来た以上、自分の保育士としての姿は正しくないといけないんです。

  

間違えているときに経験や働き方の立場にとらわれず、意見してもらえる職場環境ではないということを理解しておかねばなりません。

  

日々勉強し、日々振り返るしかないですね。

私の保育これでいいのか・・・。

 

 

子どものためになっているか、と保育を正しく見る目を養い、自分の保育を見つめ直す大切さを忘れずにいたいですね。